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2012年1月24日(火)
講師: 三井不動産 S&E総合研究所 所長補佐 瀧山幸伸
日時: 平成24年1月24日
今回のセミナーでは、前半は瀧山氏が今月訪れたアブダビ(アラブ首長国連邦)のマスダールシティの都市開発の様子の報告、後半は瀧山氏が研究する持続可能な町のモデル「J-town2010」の概要説明が行われた。
前半で取り上げられたマスダールシティは、現地の政府がサステイナブルシティとしてアブダビ市内に開発中の地域で、この建設のために電力、交通システム、建築デザイン等の世界中の先端技術が集められている。開発開始当初は、考えられる限りのアイディアを実際に取りこむ構想を立てていたが、現在ではより現実的な案に落ち着きつつあるようだ。
また、ここでは単に最先端の技術を取り入れるだけでなく、昔からの地域の気候風土に適した生活の知恵と融合させることで、砂漠という厳しい現地の環境に適した都市の構築を目指している。アブダビは、夏は日本と比較しても高温多湿であり、決して過ごしやすい環境ではないものの、マスダールシティでは、先端技術による断熱素材等を利用すると同時に、伝統的な熱が蓄積されにくい都市デザインや通気性のよい建築構造を採用するなど、過去と現在の知見を取り入れたサステイナブルな都市となるよう計画されている。
このマスダールシティの数々の取り組みは、実証実験としての実施も多く、コスト面で実用が難しいものや思うほどの効果を得られないものもあるようだが、サステイナブルシティとしての目指すところは学ぶところも多い。
後半では、瀧山氏の提唱するサステイナブルな町のモデル「J-town2010」の概要が説明された。J-town2010のモデルでは、交通インフラを最小限に抑えられるよう、約2km2(人が15分程度の徒歩で生活出来る範囲)、人口5,000人程度の町を理想としており、生活の質や地域の繋がりを重視しながら、域内でエネルギーや食糧、インフラ等を域内でまかなうことが想定されている。大都市よりもこのようなコミュニティ重視の小さな町を多く配置することが、サステイナブルを進める上で有効であると瀧山氏は指摘した。