2005年に東京大学で初めての分野横断的組織として総長室総括委員会のもとに創設されたIR3Sは、世界に先駆けてサステイナビリティ学の創生と世界的拠点形成を目指して活動を続けてきました。IR3Sは、普遍性の高い世界共通の課題と固有性の高い地域的課題の統合により、グローバル・ローカル両面の問題解決を目指してきました。その成果はすでに、低炭素社会・循環型社会・自然共生社会の融合による持続型社会の構築といった政策ビジョンの提言につながっています。
IR3Sは、国内の大学・研究機関、ならびに自治体・産業界とのネットワーク形成につとめ、2010年には、一般社団法人サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアム(SSC)を創設いたしました。また、2009年からは、アメリカ、ヨーロッパ等世界各地域のフォーカルポイントとなる大学・国際機関を結ぶメタネットワークの構築を目指しサステイナビリティ学国際会議(ICSS)、またそのアジア版であるICSS-Asiaを主催大学等と共同で開催し、世界でこの分野をリードしてきました。
2007年からは、世界に先駆けて国際誌Sustainability ScienceをSpringer社より刊行してきました。この学術誌では、既存のディシプリンでは扱いづらい俯瞰的・統合的な論文や、アジア・アフリカなど開発途上国からの論文投稿を、特集企画などを通じて積極的に受け入れています。また2012年には、IR3Sが中心となって国際サステイナビリティ学会(ISSS)が設立されました。ISSSの設立を機に、Sustainability ScienceをISSSの機関誌と位置づけることになりました。
IR3Sは、2007年に新領域創成科学研究科に創設されたサステイナビリティ学教育プログラム(GPSS)にも深く関与しています。2012年からは、文部科学省博士課程教育リーディングプログラムの採択を受けて始まったサステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラム(GPSS-GLI)の運営に参画し、研究の推進、社会連携、国際メタネットワークの形成とともに、世界のサステイナビリティを担う次世代のリーダー育成にも力を注いでいきます。
2013年4月、IR3Sは2番目の機構として国際高等研究所へ編入されました。これを機に、IR3Sはサステイナビリティ学の国際的な拠点として、ネットワークのさらなる拡張や、サステイナビリティ学のコンセプトに基づく提言の社会実装等、研究教育の活動を一層活性化させたいと考えております。
東日本大震災は、サステイナビリティ学のあり方にも大きな影響を与えています。持続型社会は、短期的・長期的な災害をしなやかに受け止めるレジリエントな社会でもあることが求められています。沿岸部被災地における里山・里海の連環の再生を通じた自然共生社会実現に向けたビジョン提言など、震災復興でもサステイナビリティ学が重要な役割を演じると考えています。
武内和彦
東京大学 国際高等研究所(TODIAS)
サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)
機構長・教授