サステイナビリティ学に関する研究教育の推進
既存のディシプリンとは大きく異なる俯瞰的な学術であるサステイナビリティ学の体系化をさらに進めるとともに、気候変動、資源枯渇、生態系劣化など地球的課題と、高齢化社会、自然災害、貧困問題など地域的課題を同時解決するためのビジョン、戦略について研究を推進します。同時に、既存のディシプリンをサステイナビリティ学にいかに位置づけるかの検討を進め、俯瞰的立場と専門的立場を兼ね備えた「T字型」の人材育成を目指します。
サステイナビリティ学による震災復興計画への貢献
東日本大震災は、日本にとどまらず世界の社会システムのあり方に根本的な再考を迫っています。20世紀型の開発による震災復興ではなく、自然との共生や自然資源・エネルギーの活用を基調としたレジリエンスの高い21世紀型の持続型社会の構築を目指すことが、復興計画では求められています。自然科学・人文社会科学にまたがる超学的なサステイナビリティ学の手法を適用し、里山・里海連携による地域再生など、社会システム全体を複合的に捉えた震災復興のビジョンづくりを行います。同時に、そうした成果を英文で国際社会に発信します。
国連大学との連携による研究教育の推進と国際シンポジウム等の開催
日本にある唯一の国連機関である国連大学、とくに2009年より国連大学本部に設置されたサステイナビリティと平和研究所(UNU-ISP)との連携を強化し、両者が一体となって研究教育を積極的に推進するとともに、それらに関連する国際シンポジウム・ワークショップを世界各地で開催します。とくに、気候・生態系変動適応科学(CECAR)に関する研究教育の推進と関連して、アジア、アフリカの各地においてシンポジウム・ワークショップ等を開催します。
また、これまで行ってきた気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等、気候変動分野への貢献に加え、国連生物多様性の10年(United Nations Decade for Biodiversity: 略してUNDB)、生物多様性と生態系サービスに関する科学・政策政府間プラットホーム(Intergovernmental Science and Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services: 略してIPBES) 等の国際的な取り組みを支援するための国際シンポジウム・ワークショップをUNU-ISPと連携しながら開催します。
国内外の大学・研究機関とのメタネットワークの形成
国内外のメタネットワーク形成のための定例会合である国際サステイナビリティ学会議(ICSS)、およびそのアジア版であるICSS Asiaの運営においてIR3Sが主導的役割を担い、会議のテーマや会議の企画運営に深く関与することによって、この分野の世界最高水準の研究拠点としての機能をさらに強化します。また、設立された国際サステイナビリティ学会(International Society for Sustainability Science: ISSS)では、初代会長校および事務局としての役割を担い、メタネットワーク形成・発展を主導します。
また国内の大学・研究機関とのメタネットワーク形成に関しては、一般社団法人サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアム(SSC)の運営に積極的に関与し、共同研究、共同教育プログラムの実施等を通じて、この分野に関心を寄せる大学・研究機関のメタネットワーク形成に貢献するとともに、地方自治体、企業、NPO等との連携を強化します。
国際誌、学術図書、啓蒙書等の刊行
UNU-ISPと連携して、引き続きSustainability Scienceの定期刊行を行うとともに、インパクトファクターを高め、この分野における最も権威のあるジャーナルに育てます。学術図書についても、引き続き、国連大学出版会等から英文図書を出版します。また、啓蒙書としては、東大出版会からのサステイナビリティ学シリーズ(全5巻)の刊行に引き続き、和文図書の出版を行うとともに、啓蒙雑誌「サステナ」を引き続き刊行します。
研究成果の社会への還元
昭和シェル石油株式会社との共同研究「エネルギー持続性フォーラム」の成果を、これまでと同様、毎年度末、丸ビルホールで開催し、産業界に対して研究成果を還元していきます。また、日本経済新聞社の後援を受けて、安田講堂で毎年1000名規模の聴衆を集めて2月に開催しているIR3S公開シンポジウムを引き続き開催すること等を通じて、研究成果の社会への還元を図ります。