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2011年4月20日(水)
東日本大震災からの復興とサステイナビリティ学の役割
3月11日に発生した東日本大震災により、東北・関東沿岸域の都市や漁村農村を中心に多くの地域が壊滅的なダメージを受け、数え切れない尊い命が失われ、十数万人の避難者がでました。この想像を絶する出来事は世界でも類を見ない大災害であり、日本とともに世界中が驚きと深い悲しみに包まれました。
犠牲になられた方々に衷心より冥福をお祈りするとともに、被災者の方々に謹んでお見舞いを申し上げます。また、被災地において救助活動や様々な復旧活動に従事されている皆様、また、原子力発電所における被害を最小限に食い止めるため日夜苦闘されている方々に深い敬意の念を表します。
社会と環境のサステイナビリティを研究してきた我々にとって、長年の住民や社会の努力の末に築き上げられた平和な生活、すなわち、学校、職場、公園、山林や海岸などの自然、コミュニティ、友人や恋人、そして、家族が一瞬にして失われたことは、言葉にできないほどの喪失感を覚えます。
しかし、私たち研究者はここで立ち止まる訳にはいきません。今回の震災で得られた事を教訓に、被災された方々や、さらに多くの皆さんと手を取り合って、サステイナビリティ学の理念と方法に立脚した新しい持続型社会を構築するため、精一杯の努力をすることを決意します。
このたびの震災では、多くの方が職住の両方を同時に失ってしまわれました。また、大きく地盤が沈降したため、沿岸域の低地が水害に対して大変脆弱な土地となり、都市や農村漁村を再建するには、そうした障害を克服するためのコミュニティ再建も含む総合的なビジョンが必要です。
仙台平野や福島では、広大な面積の田畑が津波被害を受け、汚泥や塩分による土壌汚染のため、そのままでは農業を再開できない状況にあります。ここでも、単なる復旧にとどまらない、これからの農業振興のあり方を見据えた、総合的な環境修復の施策を提案していく必要があります。
今回の大震災は被災の状況が多様であり、復旧・復興の方法も各々の地域に即して工夫されるべきです。自然、社会、個人の調和した形での職住の復興は必ず実現されるべきであり、私たちも努力を惜しまず取り組んで行きます。
社会によって評価される学問であるサステイナビリティ学は、日本のみならず世界の大学・研究機関の英知を結集し、地域社会と深く連携して、この困難に立ち向かってまいります。こうした不断の努力が、被災地域の復興はもとより、豊かな日本の再生につながることを願っています。
東京大学サステイナビリティ学連携研究機構
機構長 濱田 純一