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2009年11月9日(月)
開催日 | 2009年11月9日 |
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講師: 東京大学地球持続戦略研究イニシアティブ 特任講師 松田浩敬
概要:
1960年代以降の小麦、稲の高収量品種(HYV: High Yield Varieties)の開発の端を発する「緑の革命」は、中南米、東南・南アジアを中心に目覚ましい穀物単収の増大を実現し、当時懸念されていた食料危機を回避することに大きく貢献した。しかしながら近年、小麦、稲、トウモロコシといった主要穀物単収の低下や地球温暖化問題の顕在化の懸念から、新たな食料危機の可能性や特にアフリカの現状打破の必要性「第二の緑の革命」の可能性に関する議論、が国際的になされている。
本報告では、「第二の緑の革命」にとって不可欠と目される民間企業の種苗生産に関連する活動の歴史的変遷と現状、国際農業研究協議グループ(CGIAR: Consultative Group on International Agricultural Research)をはじめとする公的機関とのPPP(Public Private Partnership)の可能性についての報告がなされた。種苗生産に関連する民間企業、すなわち多国籍種苗企業は、多国籍化学産業や医学産業が、植物を原料とすることによる共通基盤(在来種、原種、植物、微生物に関する技術、知識、特許)、種子に化学資材をパッケージした商品を販売することによる農業化学事業の維持・拡大の可能性、バイオテクノロジー実用化の動き、を基盤に農薬等を通じて実績のあった農業分野へ参入したものである。その後、大規模なM&Aを繰り返す「種子戦争」を経て、現在はほぼ業界の再編を終えており、今後は、開発途上国へと進出していくことが想定される。種苗産業と公的機関とのPPPのあり方が模索されているが、端緒についてばかりであり、今後、いかに利潤追求を図る多国籍種苗企業に、穀物等の開発インセンティブをもたせるか、そのための知的所有権制度の国際的整備・順守、先進国-途上国間のABS(Access Benefit Sharing)のメカニズムデザインが必要となろう。