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2009年9月7日(月)
開催日 | 2009年9月7日 |
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講師: 東京大学地球持続戦略研究イニシアティブ 特任研究員 村山友梨
概要:
損害保険会社は、自らの事業活動による環境へのインパクトは比較的少ないが、保険事業による社会の気候変動に対する経済的脆弱性の削減、環境関連ビジネスへの投資事業による環境への負の影響削減に貢献している。
他産業と同様CSRの側面から気候変動対策のさまざまな活動(例えばマングローブ移植や、エコカー割引制度)も行っているが、主業務である保険を通じた気候変動に伴うさまざまな損失補填、リスク移転や、最近の自然エネルギーの生産性の保証といった商品によるリスク分散の効果は、途上国における適応策としても活用が大いに期待されている。さらにリスクに見合った適正な保険料を算出するためにおこなわれる統計学的リスク評価・工学的リスク評価・理学的リスク評価によるリスクの定量化は、リスク軽減のための適切な行動や防止策に対してインセンティブを与え、リスクコントロールによる社会損失を軽減する効果もある。
しかし保険会社はリスクに見合った保険料でのみリスクを引き受けるため、リスクが高まれば保険料は上がり、結果リスク選択につながることから、国際機関や政府からの補助金なしに途上国で成立することは難しい。保険料や補助金を政府・国際機関が負担する場合、限られた予算の中、教育・医療・国防などとのバランスから気候変動に対するリスクマネジメントにどの程度分配すべきか、費用対効果から予防策であるリスクコントロールの手段との併用をいかにすべきか、数あるリスクファイナンスのツールの中かな、それぞれの国や企業がどの程度リスクの保有可能で移転が必要かなどを検討する必要がある。