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2009年7月27日(月)
開催日 | 2009年7月27日 |
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講師: 東京大学地球持続戦略研究イニシアティブ 特任講師 竹下貴之
概要:
本発表では, 長期最適化型世界エネルギーシステムモデルを用いて, 2100年の大気中CO2濃度を550 ppmvに安定化させる気候変動制約下での, 今世紀のFischer-Tropsch(FT)合成燃料の競争力を示すとともに, どのようにFT合成燃料を製造し、輸送し、最終利用することが費用効果的かを示した研究結果(Takeshita, T., and Yamaji, K., 2008. Important roles of Fischer-Tropsch synfuels in the global energy future. Energy Policy 36, pp. 2791-802.)を紹介した。
モデル計算結果を精査することにより, 以下の知見を得た。①CO2排出削減政策によらず, FT合成燃料は, 今世紀中頃から世界の最終エネルギー消費の柱の一つとなり, 主要な石油代替エネルギーとなり得る。②FT合成燃料製造は, 今世紀中頃までは, 主に中東に賦存するstranded gasを商用化する役割を果たし, それ以降, 主にラテンアメリカや熱帯アフリカ地域に賦存する木質バイオマスからのFT合成燃料製造とその地域間貿易が選択され, カーボン・ニュートラルな最終エネルギーの広範な普及を容易にする。③FT合成燃料は, 増大する運輸部門のエネルギー需要を満足する上で重要な役割を果たすことにより, 運輸用燃料の供給源を多様化し, エネルギーセキュリティ向上に貢献する。今世紀中頃までは, トラックへのFT軽油供給が主要な役割を果たす一方, 今世紀後半では, 急成長する航空部門へのFT灯油供給が主要な役割を果たす。