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2009年1月8日(木)
開催日 | 2009年1月8日 |
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講師: 東京大学地球持続戦略研究イニシアティブ 牧田 りえ 特任研究員
概略:
途上国の農村では、土地所有層と土地を持たない最貧層との格差が拡大している。バングラデシュ北西部のBogra地区Dhunot Thanaでは、NGOであるIIRD(Institute of Integrated Rural Development)が、魚の養殖を通じ、土地を持たない貧困層に属する労働者の農業分野以外のセクターへの参入を促進し、土地所有者層との格差を縮小することを目的としたプログラムが実施されている。養魚場を作り、土地なし労働者と契約を結び、事業を開始して1~2年は定期的な収益が見込め、プログラム参加者の収入は全体として上昇した。その後、成功して別の事業を始める者と、ドロップアウトする者が出現してきた。また、プログラム参加者以外の富裕層も収益を見込んでサイドビジネスとして養魚や稚魚養殖に参入するようになり、対立が生じるようになった。また、土地を貸している者が契約している土地なし労働者より先に魚をとって売ってしまったり、貧しい労働者が医療費の支払いなどで現金がほしいときにプログラムへの参加権利を富裕層に売るなどし、収益が富裕層に流れる仕組みができてしまったといったことが課題としてあげられる。プロジェクトを実施したことにより、結果として、一定期間は、貧困層の所得向上に貢献した。また、貯蓄を可能とし、それを用いた投資により別の事業を起こし、さらなる所得向上、ひいては貧困層からの脱出を可能となるような機会を提供したが、貧困対策プロジェクトとしての事業としてはサステイナブルとはいえないだろう。プロジェクト実施農村の行政を富裕層が握っているといったことも指摘でき、基本的な構造を変えていくことも必要である。