2019年4月1日をもって、サステイナビリティ学連携研究機構は、東京大学未来ビジョン研究センターに組織統合しました。本アーカイブサイトはリンク等が正常に機能しない場合があります。最新の活動状況は、IFIウェブサイトをご覧ください。
2008年7月14日(月)
開催日 | 2008年7月4日 |
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講師: 文部科学省 科学技術政策研究所 科学技術動向研究センター
環境・エネルギーユニット 客員研究員 前田征児
概略:
サステイナビリティ・サイエンスの概観ののち、今回は地球温暖化問題に絞ったうえで、特に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書への日本の貢献度の調査結果およびそこから得られる示唆を紹介します。
サステイナビリティ・サイエンスは地球温暖化問題等のシステム破綻メカニズムを解明し、「持続可能」なシステム再構築を目指すものです。地球規模の諸問題は地球システム・社会システム・人間システムの相互関係による生じるという立場をとり、必然的に自然科学と人文社会科学の枠を超えた学問領域の融合的アプローチを用います。
欧米の研究動向をみると、米国ではハーバード大学ケネディスクールを中心に2000年ごろから概念が形成されていきまして、米国科学技術振興協会(AAAS)のフォーラムへと展開していきました。多数の大学で研究・教育プログラムが設置されています。(後述する日本の課題との関連では)米国では理工系の学科に加えて経済学や政策科学といった社会科学系学科も積極的に貢献しているのが特徴です。日本においては2005年に東京大学を中心としたサステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)が設置されました。
次に地球温暖化について見てみます。IPCCへの貢献度ですが、執筆者などの割合は、第3作業部会(二酸化炭素排出削減など温暖化緩和策)は高いものの、第1作業部会(自然科学的基礎)、第2作業部会(温暖化の影響評価と適応策)の順に低くなっています。特に第2作業部会への貢献度は低いです。IPCCに引用されている論文のシェアをみると、地球シミュレーターやアルゴ計画など大規模プロジェクト分野ではシェアが高いことが分かります。しかし全体としてみれば、環境分野全体の日本論文の引用率が7%台であるのに比べて、IPCCの文献引用度は2-3%台とやや低めです。言い換えれば、日本は執筆者の選出比率の割に論文引用が低く、研究の広がりや厚みで欧米と比べたときに差があるといえます。なお、執筆者の割合では中国・インドのプレゼンスが高いのは興味深いところです。
今後の課題としては、(1) 省庁の枠をこえた国際協力支援体制の強化、(2)(日本だけではなくアジア周辺諸地域の)影響評価など手薄な分野への研究投資充実、(3)問題解決型の研究に人文社会系研究者を初期段階から取り込んでいくことなどが望まれます。