2019年4月1日をもって、サステイナビリティ学連携研究機構は、東京大学未来ビジョン研究センターに組織統合しました。本アーカイブサイトはリンク等が正常に機能しない場合があります。最新の活動状況は、IFIウェブサイトをご覧ください。
2007年2月19日(月)
開催日 | 2007年2月19日16:00-17:30 |
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会場 | 東京大学本郷キャンパス 医学系研究科教育研究棟2階第一・第二セミナー室 |
『中国のイネとコメ』
講師:森田 茂紀氏(東京大学大学院農学生命科学研究科附属農場)
<概要>
東大農場(東京大学大学院農学生命科学研究科附属農場)の紹介。
「根の事典」、「根の発育学」、「根のデザイン」等、作物の根に関する著書について。
東京大学・天津市共同研究プロジェクト:中国の急激な経済成長による環境問題の深刻化や都市と農村の格差の拡大などを背景に、巨大都市と近郊農業地帯をあわせもつ天津市において、都市と農村の持続的な発展に向けたプロジェクトを行っている。このプロジェクトには、水稲関係、生態系再生、土壌改良、水質浄化、バイオマス利用などのいくつかのサブグループがある。水稲サブグループでは、単に収量だけでなく品質・食味に重点を置いた品種の育成と栽培システムの確立を目指して、根系に着目した基礎的研究も含めながら、活動している。中国で初めてのコメの品質・食味に関するシンポジウムを昨年、天津で開催し、今年、その成果を中国語で本として出版した。また今年、天津農学院に「中日水稲品質・食味研究センター」が設置されることが正式に決定した。
イネイネ日本プロジェクト:二酸化炭素の排出抑制や、減反・生産調整による耕作放棄水田の活用に寄与する、イネのバイオエタノール化を利用した社会の持続的発展に関するプロジェクト。イネのコメ部分だけでなく、茎や葉を含めた作物全体を対象として、ホールクロップの利用を想定していることが特徴である。イネのバイオエタノール化の技術システムの構築や社会条件の整備とともに、耕作放棄水田の有効利用を行い、農村の活性化と産業の創出を目指している。
森田先生へのインタビュー
漢農業におけるサステイナビリティとは?
日本列島では約2000年に渡って水田でイネが連作されており、持続的な作物栽培システムが維持されてきました。この生態系のシステムを最大限活かすことが「イネイネ日本プロジェクト」の趣旨です。稲作農家のやる気を活かし、減反・生産調整のために使われなくなった水田を中心にエネルギー作物としてイネを栽培し、コメだけでなく、籾殻や稲藁をふくめたホールクロップをバイオエタノール化して利用することを考えています。このプロジェクトは、二酸化炭素の排出を削減するだけでなく、国土を保全し、食料の安全保障という観点からも大きな意義がありますし、新たな産業化にもつながります。今後も、「誰にとっての持続性か」という点を忘れずに、研究を進めていきたいと考えています。
日本、アジアが果たす役割は?
今後、中国の動きが世界に与える影響が様々な面でますます大きくなっていくことは疑いなく、日本は中国を中心にアジアと連携を深めることが重要となります。その場合、例えば公害という環境問題については、日本が痛い経験を乗り越えてきた経験を利用してもらえるはずです。また、約2000年前に伝えてもらった稲作についても、品質や食味については先行研究の成果を踏まえて恩返しができる貴重な機会だと思います。相互の農業を維持・発展させることを前提として、連携が深まることを期待しています。
若者に向けてひとこと
まず、自分の視点となる専門分野を持ち、武器となる専門技術を身に付けることです。そのうえで視野を広げて行く必要がありますが、本を読んだり、人の話を聞くだけではなく、現場や経験を大切にして下さい。
大人に向けてひとこと
最近、目先の仕事を片付けることで手一杯で、考えることを忘れてしまいそうです。お陰様で現役前半の仕事で学会賞を頂きましたので、現役の残り時間の中で、自分が何をしなければいけないか、何ができるか、何をしたいかを整理して、再始動したいと考えています。