2019年4月1日をもって、サステイナビリティ学連携研究機構は、東京大学未来ビジョン研究センターに組織統合しました。本アーカイブサイトはリンク等が正常に機能しない場合があります。最新の活動状況は、IFIウェブサイトをご覧ください。
2007年2月19日(月)
開催日 | 2007年2月19日16:00-17:30 |
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会場 | 東京大学本郷キャンパス 医学系研究科教育研究棟2階第一・第二セミナー室 |
『地球の贈り物-自然から健康を学ぶ-』
講師:池上 文雄氏(千葉大学環境健康フィールド科学センター)
<概要>
漢方薬と薬膳
漢方薬とは、漢方医学の考え方に基づいて、複数の生薬を体系的に配合したもののことを言います。民間薬が、民間伝承に基づき経験的に用いられるのに対して、漢方薬は、医書に基づき、理論体系付けされた処方が行われます。 漢方薬の生薬には五味(辛・酸・甘・苦・鹹)・五性(寒・涼・熱・温・平)があり、その薬能と関連します。例えば、苦味を持ち、熱を冷ます(寒性)作用がある生薬は、興奮状態や炎症状態に適用される、などのことです。 また、食べ物も薬と同じように身体に作用する(薬食同源)という食事観に基づき、旬の食材を使って体質や症状にあわせた生薬や食品を選んで作られる料理が薬膳です。
千葉大学の取り組み
現代は生活習慣病などが問題となっていますが、漢方薬や薬材的食材を効果的に活用することで、疾病を改善・予防することが出来ます。千葉大学では、植物の多面的機能性の利活用による健康社会の構築を目指した教育研究を推進しています。
池上先生へのインタビュー
漢方医学(東洋医学)におけるサステイナビリティとは?
漢方医学の思想そのものと思います。東洋の伝統学術にしばしば登場するのが陰陽五行説とそれに基づく考え方です。陰陽二元論と、木・火・土・金・水という自然界の始原的五要素の循環と変移において、自然と人体のあり方を理解しようとする東洋的な考えは、LOHAS (Lifestyles of Health and Sustainability:健康と持続可能な発展を優先した生活スタイル) あるいはサステイナビリティ学の思想と同じと考えています。紀元前に著された最古の医学書である「黄帝内経」に記されていることが、21世紀を迎えた今なお大切な考え方であるということは、私たちが20世紀に失ったものが如何に大きいかを物語っているのではないでしょうか。この地球に生を受けた人間としての原点に帰って、「百歳を度として、すなわち去る」ために、高齢社会をサステイン(持続させる)していくのは健康とその衣食住全ての環境であると思います。
日本、アジアが果たす役割は?
西洋医学を紐解くと、天然物に健康を託したという医学の原点では東洋医学と大差がありません。しかしながら、自然観や全体観を背景にした東洋医学の思想は、人間の人体、精神も自然界に従うので、病気を診るのではなく患者を診るという点に特徴があります。チベット医学を源流とした医学体系を含めた東洋の伝統学術と価値観が果たす役割は大きいことと思います。
若者に向けてひとこと
温故知新!今なお古医学書を紐解くと、現代の医学の知識から新たな考えが導き出されてくることがあり、それが新しい発見に繋がることもあります。たくさんの書物を読み、何事にも好学心を抱き、自分の頭で考え、自分の目で見て判断し、多くの師、友と語らい、結論を出すようにしてください。
大人に向けてひとこと
「今日までそして明日から」という詞があります。自然界にあって、自分の知っていること、わかっている範囲はそんなに広いわけではなく、一人の人間の力は限られています。健康で充実した高齢期を迎えよう、それができる社会を自分達がつくっていこう、という心構えと努力が大事だと思います。