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2006年12月13日(水)
開催日 | 2006年12月13日 16:00-17:30 |
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会場 | 東京大学工学部14号館2階144講義室 |
『火山噴火罹災地を掘る-ポンペイとソンマ・ヴェスヴィアーナの場合-』
講師:青柳 正規氏(国立西洋美術館館長)
<概要>
ヴェスヴィオ火山のマグマは粘性が高く、間欠的に大規模噴火を起こすと考えられている。西暦79年の大噴火により、山麓の都市国家ポンペイは壊滅した。逆説的だが、この悲劇により、ポンペイの考古学的資料価値は極めて高い。短時間に厚い火砕流で全面的に覆われた市街地は、近年の発掘作業の進展により、ローマ時代の都市空間秩序を我々に教えてくれる格好の空間となっている。
本プロジェクトは、考古学のみならず、火山地質学、空間情報科学、歴史学、地理学その他、他分野の混成チームを構成している。これにより、物理的な空間復元を、テキストや花粉分析結果などで補強することが可能となった。学際的な研究アプローチを体現したプロジェクトである。
地元イタリアのCG会社と連携制作されたDVDを鑑賞。発掘調査成果を統合し、ローマ時代当時のポンペイ市内の様子を3Dビジュアライズした、動画作品である。学術論文の公表も重要な研究者の使命だが、研究成果の世間へのアウトリーチの一環として、こうしたビジュアル作品の重要性を再確認。今後、あらゆる空間科学の場において、ビジュアライゼーションはますます強力な手段となるだろう。
青柳先生へのインタビュー
考古学からみるサステイナビリティとは?
考古学によって復元できる過去の文化は主としてモノに関する部分です。思想など概念的な部分を復元するのは苦手といえるでしょう。しかし、さまざまなモノを関連づけることによってある程度時代の考え方などを復元することができます。サステイナビリティに関しても、ギリシア・ローマ時代のとらえ方を理解することはできます。古代の人々の生活は現代のわれわれから見るなら、基本的にエコロジカルですから、現代人が学ぶべきことは数多くります。しかし、その一方で、スペインのラス・メニダスで見ることができるように、鉱物資源を得るために山を削り取ってしまう「ルイナ・モンティウム(山崩し」という乱暴な採掘法も使われていました。サステイナビリティとは、同時代および近未来をどうとらえるかの認識のあり方ですから、考古学においてもその視点から多くの新たな」知見をもたらすことができると思います。
日本、アジアが果たす役割は?
18世紀以来世界を支配もしくは主導しているのは欧米です。大学という制度や近代科学がその典型ですが、そろそろ制度疲労が起こりつつあるのではないでしょうか。人類がこれからも活力を保持して、種としての生存を続けるには、根本的に新しい考え方や研究の方法がそろそろ呈示されてもいいのではないでしょうか。それがどのような場や集団から生まれるかはわかりませんが、現在主役でないという意味から、日本・アジアから生まれる可能性があるのではないでしょうか。
若者に向けてひとこと
日本にいると、世界で同時進行している重要な課題から大変疎くなります。アンテナをのばして、世界の動きをしっかり見据えると同時に、辛辣な見方を身につけてほしいと思います。
大人に向けてひとこと
社会生活の上でも、個人生活においても、他者への思いやり、礼儀作法、ホスピタリティーをもういちど考え直してほしいと思います。