虐待と書いたら、論議の余地なく許されない行為だと、多くの人は思うでしょう。体罰と書くと、場合によっては、許されるケース、あるいは必要なケースもあると考える人がいるようです。リンチと書いたらどうでしょうか。許されない行為だと、多くの人が思うのではないでしょうか。リンチを漢字で書くと私刑です。辞書によると「裁判などの手続きを取らずに、私人が勝手に行う暴力的制裁」がリンチです。体罰とどこが違うのでしょうか。リンチと虐待が異なるのは、制裁を加えられるような何かしらの行為があったのがリンチで、ないのが虐待なのでしょう。体罰には、必ずそれに先立って罰せられるような行為があるのでしょうか。
虐待が相次いで報道されています。乳幼児への虐待、知的障害者への虐待、高齢者への虐待…。ニュースを見ると暗澹たる気持ちになります。
虐待は日常の光景ではなく、それぞれが特異なケースであるのでしょう。
西東京の知的障害者支援施設では入所者に対して職員による虐待がたびたびあったとされています。
春日部市の高齢者介護施設では3年前、わずか4日間に3人の入所者が亡くなり、同じ時期に別の高齢者に傷害を負わせたとして元職員が、いまになって逮捕されました。いずれの場合も第一発見者は同じ元職員でした。元職員は傷害容疑に対して「イライラしてやった」「第1発見者になって同僚に認められたかった」と言っているようです。
これらの虐待は社会的に重大な犯罪と認識されます。
教育現場における体罰は、やや日常の光景に近く、重大な犯罪であるとは、多くの場合にはいわれていません。ただし、虐待と共通項があるような気がします。
虐待をする者、体罰をふるう者は、上位の安全な側に自分の身を置いています。稀に反抗にあうこともあるのかもしれませんが、自分の身が必ず危うくなるのであれば、虐待も体罰も行わないでいることでしょう。
さらに、弱者に対して暴力をふるうことで、自分に何らかの利を得ようとするという共通性もありそうです。ときには、自分にかかるプレッシャーのはけ口としているようなこともあるのでしょう。
パワハラとかセクハラも類似性があります。いろいろ思うと、ますます暗澹たる気持ちになります。