私の友人に、日本で働いている外国人がいます。4年ほどで、仕事上はまったく困らないまでに、日本語のコミュニケーション能力が上達しました。すべて実践的に身に付けたもので、体系的な日本語教育は受けていません。いまはそれでいいのですが、将来を考えて、日本語の能力検定試験を受けようとしています。自分に備わった日本語の能力を、客観的に認めてもらえるようにし、なおかつ、より高いレベルへと挑んでいきたいということです。
専門の教師に授業料を払うだけの余裕がないので、友人たちで、受験をサポートしようということになりました。 まず模擬テストをしてみますと、リスニングはかなり高いレベルにあることがわかりました。日々の仕事が訓練の場になっているからです。ところが、文法や読み書きに弱点がありました。 ふだん仕事で使っている日本語は、耳で聞いて、口で答えて、しかもある程度限定された内容であるために、読んだり書いたりすることや、一般化された文法の理解は、あまり要求されず、その分の力があまりついていないのでした。 そこで、漢字を覚えることと、言葉の使い方を理解することに重点を置いた、受験対策を始めることになりました。 漢字を教えるのは、われわれにとっては難しいことではありません。しかし、覚える当人は実に大変です。数が多い上に、読み方が何通りもあるために、あまりの煩雑さに、漢字を見るのも嫌だという状況になってしまいます。友人のまわりには、漢字が嫌で、読み書きの勉強を放棄している人が何人もいます。われわれ日本人も、漢字の読み書きには膨大な時間を注いできたと説明して頑張ってもらうのですが、根気を維持するのがとても大変です。 文法を教えるのは、われわれにとってメチャメチャに難しいです。例えば、主格助詞の「は」と「が」の使い分けを説明しなければならない場面がありました。われわれは正しく使えるけれど、的確な説明ができません。日本語教師向けの文法書を読みますと、自分がわかっているはずのことが、何だかよくわからなくなってしまいます。理屈で全部通すのは難しく、まずは、いくつかの典型的な例文を覚えてもらうしかないようです。 ということで、日本語の難関は、教わる側にも、教える側にもあって、四苦八苦の状態です。
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2012年9月24日(月) |