このような見出しを、1カ月ほど前の新聞でご覧になった記憶はありませんでしょうか。
記事をざっと読んで、その後は忘れていたのですが、ふと思い出して調べてみたら、こんな話でした。
建設計画を発表したのは中国の遠大集団という会社です。会社のウエブサイトに、「天空城市初歩計画」というのがあります。
建てるといっているのは、高さ838メートル、220階建てのビルで、アラブ首長国連邦のドバイにあるブルジュ・ハリファの高さ828メートルを上回ります。ビルの83%が住宅で1万7400人が住み、その他に、ホテル、学校、商業施設などがあって、3万1400人の都市になるということです。建設場所は、中国の湖南省長沙市で、今年の11月に着工し、来年の1月に完成予定です。
世界一になるには、早く建てることが重要です。何しろ、1000メートルを超えるようなビルの計画が中東にはいくつもあるのです。来年の1月に完成なら、間違いなく、その時点で世界一になります。
ちなみに、ドバイのブルジュ・ハリファは着工から開業まで4年、東京スカイツリーは着工から竣工まで3年半でした。2カ月で完成というのは驚異的な速さです。
こんなことができるのか、できるとしても安全性はどうなのか、誰もが疑問に思います。遠大集団には、6日間で15階建てのホテルを完成させた実績などがあり、ネット上にはその様子を撮影した画像があります。工場で作ったものを順に積んでビルの形にし、外装も内装もまたたく間に仕上げてしまいます。安全性については、長沙市で求められている耐震基準を上回り、環境に対しもさまざまな配慮をするということです。
計画されている通りに実現するのならば、すばらしいとしかいいようがありません。それでも、本当なのかと眉に唾をつけたい気持ちは消えませんし、そんなことをしていいのかなというとまどいもあります。
思えばその昔、「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」という交通標語がありました。サステイナビリティにひっかけていうと、「有限の地球そんなに急いで何するの」となるでしょうか。
思えばそのまたずっとずっと昔、中国には壮大なバブルの時代がありました。隋の煬帝のときに、大運河を初めとするインフラ整備がものすごいスピードでなされました。その速さたるや、革命以前の中国の歴史で一回限りのことでした。あまりの速さに国が耐えられず、隋王朝は崩壊しました。多大の犠牲を出して作られたインフラは残り、その後、千年にわたって中国経済を支えました。
遠大集団に見られるようないまの中国の恐るべきパワーは、果たして持続可能なのでしょうか。それとも、それはたとえ一時的ではあっても、将来世代にとってプラスとなるものを残せるのでしょうか。